マーメイド号

これは実話である。
世界中には本当に奇妙な話がゴロゴロ転がっている。
今から話す話はそんな奇妙な物語の一つである。
イギリスにピーター・リチャードソンという男がいた。
ピーターは船乗りである。
幼くして家族と生き別れた彼だが、明るい性格で力強く生きていた。
マーメイド号の船員として働きながら…
1829年10月、イギリスの帆船「マーメイド号」は、オーストラリア西海岸にあるラッフルズ港を目指し出港した。
しかし、出港からわずか4日後、トレス海峡に差し掛かったときに沈没してしまう。
不運にも嵐に遭い、船は座礁してしまったのだ。
乗組員たちは全員海に投げ出されてしまったのだが
近くに大きな岩場を発見!
大波迫り来る嵐ではあったが
幸運にも、19名の乗組員達は誰一人欠けることなくそこに泳ぎ着くことができたのだった。
無事に避難したピーター達だったが…
数日間何も起きなかった。
わずかな変化があるとすれば、船員達の空腹感と疲労感が溜まるだけである。
もうダメだ…
ピーター達が絶望を感じていたその時、奇跡は起こる。
彼らは沖を走る一艘の船に無事発見されたのである。
遭難していた彼らを発見したのは、運よく通りかかった船「スイフトシュア号」だった。
マーメイド号の乗組員19名全員はスイフトシュア号に無事救助される。
しかし救助されてから5日目、今度はスイフトシュア号が突然強い海流に巻き込まれ、暗礁に乗り上げてしまうのだ。
なんてまぁツイテナイ…
こうして、またも船を失ったマーメイド号とスイフトシュア号の乗組員。
合わせて32名は船を捨てて脱出することになる。
不幸中の幸いか?
近くに無人島があったため全員無事に泳ぎ着き、32名はそこで救助を待つことにした。
約3時間後「ガバナー・レディ号」という船が偶然その付近を通りかかる。
幸運にも直ぐに発見され32名全員が無事救助されたのだ。
ところがほっとしたのも束の間である。
今度はガバナー・レディ号で火災が発生。
出火原因は不明だが、材木を運んでいたガバナー・レディ号はアッ!という間に炎に包まれてしまう。
こうしてまたもや船を失ってしまったのだ。
乗組員たちは全員救命ボートで脱出した。
その人数は3隻の合計で64名になっていた。
そこは太平洋のど真ん中。
場所も悪く、さすがに今度ばかりは…とピーターは絶望した。
しかしこの事件、幸か不幸か?不幸か幸か?
白の後は黒、黒の後は白なのである。
しばらく漂流していた彼らだが、今度はオーストラリア政府の船「コメット号」が通りかかり、またもや64名全員が無事救助されたのだ。
そんなばかな?!?
と御思いだろうが、これが実話だから世の中は面白い。
しかし、まだまだこの物語は終わらないのである。
今度はこのコメット号が嵐に巻き込まれて転覆してしまうのである。
あまりにも突然の出来事で、乗組員たちは救命具を出す暇さえなかった。
とっさに木切れなどに掴まってみたが、そこは太平洋のど真ん中である。
海をただただ漂うことしかできず。
今度こそ神も見放されたと思われた。
それでも乗組員たちは、助け合い、励まし合い、嵐の中全員が生き延びていたから驚きである。
船乗りとはいつの時代もたくましいのである。
遭難に次ぐ遭難…
精も根も尽き果て、呆然と海を漂っていた乗組員たちだったが
奇跡はまだまだ続くのだ。
郵便船「ジュピター号」に発見され、今度も誰一人欠けることなく全員が救助されたのである。
この物語の不思議な所は、誰1人、死なないという所だ。
仲間は増えるが、減りはしないのである。
無事に救助された全員を加え、ジュピター号の乗組員は合計で128名になった。
暗礁…広い広い海にはそんなに暗礁があるのだろうか?
またもや、ジュピター号は暗礁に乗り上げ、船底に大きな穴が開いてしまい沈没してしまうのである。
タイタニックという巨大な船が暗礁に乗り上げ沈没した話は有名だが。
暗礁という物は船の天敵のような物なものなのだろうか?
またしても暗礁にやられたのである。
海に投げ出された128名の乗組員。
しかし、まるで運命であるかのように、偶然にもイギリスの客船「シティ・オブ・リーズ号」が通りかかる。
またしても全員が無事に救助されるのである。
やれやれだぜ(-.-)y-.”, o O
リーズ号はイギリスからオーストラリアに向かって航行している最中で、100名ほどの乗客を乗せていた。
そして、救助した128名を加え、合計200名以上を乗せる事となる。
定員オーバー?
今度はそんな流れ?
ご安心なさいませ。
なぜなら、シティ・オブ・リーズ号が最後の船となるのですから。
これ以上続くとブログを読む貴方も、ブログを書く僕も疲れてしまう。
彼らはついに奇妙な運命から解放され、無事にオーストラリアに辿り着いたのであった!!
めでたしめでたし。
と終わってしまったらこの物語の魅力は半減してしまう。
さらにもう一つだけ
運命が待っていたのだ。
シティ・オブ・リーズ号に救助された乗組員が休んでいると
リーズ号の船医がやってきて「イギリスのヨークシャー出身者はいませんか?」と訪ねてきたという。
理由を聞くと
乗客の中に重病人の女性がいて、うわ言で息子の名前を呼んでいるというのだ。
ヨークシャー出身の女性の為に、息子のフリをして励まして欲しいという。
「適当にヨークシャーの話しとかしてさ!話合わせてよ!」
まぁ医者もサジを投げたのだろう。
その女性が呼ぶという息子の名は「ピーター・リチャードソン」
忘れていないだろうか?
そう!この物語の主人公。
マーメイド号の船員ピーター・リチャードソンその人である。
なんと、ピーターが幼くして生き別れた母が
シティ・オブ・リーズ号に乗っていたのである。
こうして親子は奇跡的な再会をしたのだ!
さらにさらに。
ピーターは奇跡を呼ぶ事となる。
息子と再会できた喜びから、母の病気が回復し、2人はその後20年間も幸せに暮らす事となるのだ。
結局、最初の「マーメイド号」から立て続けに5回も遭難したわけだが
死者・行方不明者を誰1人出すことはなかった。
そのため人々は「神様がこの親子を再会させようとしたのでは?」と噂したという。
この「マーメイド号」の記録は、イギリスにある世界最大の保険会社ロイズと、オーストラリア海運局にその記録が残されている。
めでたしめでたし。

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